はじめに
前回の記事では、在留特別許可の制度概要や審査の考慮事項、ガイドラインに基づく積極要素・消極要素の整理について解説しました。今回はその続きとして、在留特別許可を希望する外国人が、実際にどのように申請を行うのか、その流れや準備すべき書類、注意点、行政書士の支援内容までを詳しくご紹介します。
1. 在留特別許可の手続き概要
在留特別許可は、**「申請によって得られる許可」ではなく、「退去強制手続き中に法務大臣の裁量によって与えられる許可」**です。したがって、手続きの出発点は「自ら出入国在留管理局へ出頭(自首)」することです。
❖ 手続きの流れ(全体像)
- 事前相談・出頭準備
- 出頭(自首)
- 提出書類の整理と提出
- 事情聴取・収容・仮放免手続
- 在留特別許可の審査(入国管理局 → 法務省)
- 許可または退去強制の決定
- 許可された場合:在留資格の付与と在留カード交付
2. 出頭(自首)の準備
在留資格がない状態、たとえばオーバーステイ中であっても、自ら出頭することが在留特別許可の前提条件です。
しかし、いきなり出頭するのではなく、事前準備とリスクの把握が必要です。
❖ 出頭前に確認すべきポイント
- 入管でそのまま収容されるリスクがあるか(過去の犯罪歴、逃亡の恐れ)
- 同行者(配偶者、弁護士、行政書士)が必要かどうか
- 生活実態を証明できる書類の準備状況
- 子どもの在学証明や生活状況などの客観的証明
行政書士による事前相談で、出頭時のリスクや対応方法を明確にすることができます。
3. 出頭後の流れ
出入国在留管理局に出頭すると、本人に対して以下のような手続きが行われます。
❖ 事情聴取
- 滞在経緯、在留理由、生活実態などを詳細に聴取
- 同居家族の情報、婚姻歴、職歴なども含まれる
- 虚偽や矛盾があると不利な判断につながる
❖ 仮放免(かりほうめん)
- 原則として収容されるが、健康状態や家族事情により仮放免が認められる場合あり
- 仮放免許可申請書の提出と保証金(5万円~30万円程度)が必要
- 仮放免中は就労不可、定期的な出頭義務あり
4. 在留特別許可を得るために必要な書類
審査で重視されるのは、本人の反省や生活実態、人道的な事情を客観的資料で裏付けることです。
❖ 主要な提出書類
種類 | 内容 |
---|---|
本人の陳述書・反省文 | オーバーステイに至った経緯、反省、在留希望理由など |
経緯説明書 | 入国から現在までの滞在の流れを時系列で整理 |
婚姻関係証明書類 | 戸籍謄本、婚姻届受理証明書、住民票など |
子どもの関係書類 | 出生届、在学証明書、成績表、生活記録など |
扶養証明 | 税証明書、給与明細、収入証明、就労証明など |
日本人家族の陳述書 | 配偶者・子・支援者からの支援表明・意見書 |
診断書等 | 難病や治療継続の必要がある場合は医師の意見書 |
写真 | 家族生活の様子を示す写真(家庭生活の証拠) |
※すべて日本語で提出が原則。必要に応じて翻訳付き。
5. 審査の実際と注意点
審査は、地方出入国在留管理局での判断を経て、最終的に法務大臣が許可の可否を決定します。
❖ 審査の着眼点(ガイドラインに基づく)
- 積極要素:子どもの養育、日本人配偶者との安定的婚姻、難病など
- 消極要素:犯罪歴、入国偽装、虚偽申告など
- 総合評価:事情の重さ、反省の度合い、在留の必要性のバランス
❖ 期間の目安
審査期間は早くて3か月前後、長ければ1年近くかかる場合もあります。
6. 不許可となった場合の対応
不許可となれば、退去強制手続きが正式に進行し、国外退去が命じられます。
しかし、次のような対処も可能です:
- 再出頭による事情変更の主張(新たな積極事情が生じた場合)
- 訴訟(行政訴訟)による対応は現実的には困難
最初の出頭前の準備が極めて重要であり、行政書士等の専門家と連携することで、不許可のリスクを最小限に抑えることが可能です。
7. 行政書士が提供できる具体的支援
行政書士としては、以下の業務を通じて、申請者を支援することが可能です。
サポート内容 | 詳細 |
---|---|
初回相談・出頭同行 | 状況のヒアリングと事前のリスク説明、出頭同行も可能。申請代行不可。 |
必要書類の整理 | 生活実態や人道的理由を裏付けるための証拠収集と整理 |
書類作成支援 | 陳述書、反省文、意見書など、審査官の目線を意識した書類作成 |
関係者との調整 | 配偶者、雇用主、支援者との協力書面の作成支援 |
入管対応 | 電話・書面での補足説明、問い合わせ、追加提出など |
8. よくある質問(FAQ)
Q1:行政書士が代理人になって申請できますか?
A:いいえ、行政書士は在留特別許可申請の手続きの代理人にはなれません。行政書士は、入管法上の「申請取次者」として、書類提出などの申請行為を代わりにするだけです。あくまで「代理人」にはなれません。
Q2:在留資格はどのようなものが付与されますか?
A:「定住者」や「日本人の配偶者等」など、個別の事情に応じた在留資格が与えられます。活動制限や在留期間も個別に指定されます。
Q3:費用はどれくらいですか?
A:行政書士に依頼する場合、案件の難易度や書類の分量に応じて10万円~30万円程度が相場ですが、当事務所では初回相談は無料で承っております。
9. まとめとご相談のご案内
在留特別許可は、申請制度でありながらもその性質は非常に特殊であり、出頭と同時に人生が大きく左右される制度です。審査は年々厳格化しており、出入国在留管理庁が定めたガイドラインに即した説明と書類提出が不可欠です。
「自分のケースで許可される可能性はあるのか?」
「どんな資料を用意すればいいのか?」
「出頭前に準備すべきことは何か?」
──そんな疑問をお持ちの方は、ぜひ行政書士にご相談ください。専門家のサポートによって、許可への道が開かれる可能性が広がります。
当事務所では、これまで多くの特別在留許可支援実績があり、個別事情に合わせた戦略的サポートを行っています。まずはお気軽にご相談ください。

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