実家の終わらせ方 ― 相続後の空き家と向き合うために、実家じまいに向けて

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高齢の親が亡くなったあと、誰も住まなくなった実家をどうするか。これは多くの方が直面する課題です。かつて家族の思い出が詰まった場所であるがゆえに、手放すことに迷いを感じる方も少なくありません。しかし、空き家をそのままにしておくことには費用的・法的なリスクも伴います。親が元気なうちに実家についての親の意向を聞いてみてはいかがでしょうか?相続が発生してからでは遅い場合があります。

この記事では、実家を「終わらせる」ために考えるべき4つのポイントを解説します。


1. 空き家の維持費 ― 放置すると経済的リスクに

誰も住んでいない家でも、持っているだけでコストは発生します。主な維持費用には以下のようなものがあります。

● 固定資産税・都市計画税

住んでいなくても課税されます。小規模住宅用地としての特例が受けられる場合は6分の1に軽減されますが、住宅としての利用がなくなると軽減措置が外れることがあります。

● 光熱費・上下水道の基本料金

使用していないつもりでも、契約を続けていれば基本料金が発生します。

● 保守管理費(草刈り・雪かき・点検など)

放置すれば景観悪化や害虫の温床、空き巣被害の原因にもなりご近所トラブルを招きます。民間に管理委託すれば月5,000円〜1万円程度が目安です。

● 火災保険

無人の家は火災リスクが高いため、保険料も割高になります。

● 特定空家の指定リスク

市町村により「特定空家」に指定されると、勧告・命令・代執行と進み、最終的には行政による取り壊し・費用請求もありえます。

結論:住んでいない家を維持することは、年間で数十万円以上の負担となる可能性があり、早めの対処が求められます。


2. 空き家の売却、実家を手放すときの税金 ― 売却・解体の前に知っておくべきこと

実家を処分する際に重要なのが「譲渡所得税」と「登録免許税」「不動産取得税」などの各種税金です。

● 譲渡所得税(売却益に対する税金)

取得費と譲渡費用を差し引いた売却益が課税対象です。
ただし、相続空き家を売却する場合には、最大3,000万円の特別控除が受けられる特例があります(一定条件あり)。
たとえば:

  • 昭和56年5月31日以前に建築された
  • 相続人が自ら居住していない
  • 売却価格が1億円以下
    などが主な条件です。

通常の税率は、5年を超えて所有した家を売ればその利益に20.315%(長期譲渡所得)、また5年以内は39.63%(短期譲渡所得税)となりますが、相続した空家を売却して得た利益には最大3,000万円まで控除ができる制度です。

● 解体費用と滅失登記

更地にして売却を目指す場合、解体費用は建物の構造や地域によりますが、100〜300万円程度が相場です。また、建物を取り壊した場合は、滅失登記の申請が必要で、行政書士や土地家屋調査士が関わります。

● 登録免許税や不動産取得税

相続登記を行っていない場合、まず法定相続による所有権移転登記が必要で、その際に登録免許税(評価額の0.4%)が発生します。

結論:売却前には、節税のためにも相続登記と空き家特例の条件確認が重要です。専門家に相談することで、税負担を大きく軽減できる可能性があります。


3. 遺品整理 ― 感情と費用のバランスをどうとるか

空き家の中には、大量の遺品がそのまま残されていることが多くあります。

● 自力での片付けの限界

高齢者世帯の家には数十年分の物品が詰め込まれていることも。思い出の品を前にして手が止まり、作業が数ヶ月単位で進まないこともあります。

● 遺品整理業者の活用

業者に依頼すれば、量や間取りにもよりますが、

  • 1DK:5〜10万円
  • 3LDK:20〜50万円以上
    が目安です。
    買取可能な品があれば、コストを下げることもできます。

● 供養やお焚き上げの必要性

仏壇・人形・故人の遺影などは処分に迷うところ。業者によっては供養・お焚き上げを含むサービスもあります。

結論:遺品整理には体力・時間・精神力の負担がかかります。無理をせず、家族で分担したり、プロの手を借りることも検討しましょう。


4. 墓じまい ― 先祖の供養と今後の負担の整理

「実家じまい」の一環として、遠方にある墓の整理=「墓じまい」も考える方が増えています。

● 墓じまいの流れ

  1. 親族の同意を得る
  2. 埋葬先の改葬先を決定(永代供養など)
  3. 墓地管理者に離檀の申し入れと改葬許可申請
  4. 改葬先へ遺骨の移送と再埋葬

● 墓じまいにかかる費用

  • 墓石の撤去費用:約10〜30万円
  • 改葬許可申請手続:行政書士が代理可能
  • 永代供養料:10〜50万円程度(寺院や霊園により異なる)

● 注意点

  • 親族の意見対立
  • お寺とのトラブル(離檀料の請求など)
  • 改葬先の管理体制(無縁仏扱いのリスク)

結論:墓じまいは、法的手続きだけでなく親族関係や宗教的配慮も求められます。行政書士など第三者を交えて冷静に話し合うことが大切です。


最後に ― 実家を放置しないためにできること

実家を「終わらせる」ことは、過去を否定することではありません。むしろ、家族の歴史を大切にしたうえで、今後のトラブルや負担を未然に防ぐための前向きな選択です。トラブルを避け、親の意思をしっかり伝えたいなら遺言を残すのがよいでしょう。遺言で示された親の意思は、子供たちも尊重するものです。公正証書遺言にすれば遺産分割協議も円滑に進みます。

行政書士は、

  • 遺言作成のサポート
  • 相続登記の手続き支援
  • 解体に関する法的アドバイス
  • 遺品整理・墓じまいの手配サポート
  • 相続人間の合意書作成
    などのサポートが可能です。

空き家のままにしておく前に、一度専門家にご相談ください。実家との「上手な別れ方」を一緒に考えていきましょう。


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