
はじめに
空家問題は全国的な社会課題となっています。総務省の統計によると、全国の空家数は約849万戸にのぼり、その中でも老朽化が進んだり、管理が行き届かない住宅が増加しています。こうした空家の中で、特に危険性や周辺環境への悪影響があると判断されたものが「特定空家」として行政から指導・勧告を受ける可能性があります。
この記事では、特定空家の定義を法律に基づいてわかりやすく解説し、指定の条件・行政の対応・所有者が取るべき対策を、専門家の視点で丁寧にまとめます。ご自宅や相続した実家が「特定空家」に該当するのではないかと不安な方は、ぜひ最後までご覧ください。
コンテンツ(目次)
- 特定空家とは?基本的な定義を理解しよう
- 特定空家に該当する4つの条件
- 特定空家に指定されるとどうなるのか
- 特定空家指定を回避するための実践的ポイント
- 行政による指導・勧告・命令の流れ
- 特定空家に関する補助金・支援制度
- 空家所有者が今すぐできる対策
- 行政書士に相談するメリット
- まとめ:特定空家を防ぐための第一歩
特定空家とは?基本的な定義を理解しよう
特定空家の法的根拠
「特定空家」とは、**空家等対策の推進に関する特別措置法(通称:空家等対策特別措置法)**に基づいて市町村が判断・指定できる空家のことです。
同法第2条第2項では、「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態」「衛生上有害となるおそれのある状態」「適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態」などが挙げられています。
通常の空家との違い
単なる「空家」と「特定空家」の最大の違いは、行政が法的措置を取れるかどうかにあります。通常の空家は所有者の自由な管理に委ねられますが、特定空家に指定されると、市町村が助言・指導・勧告・命令・行政代執行を行うことが可能になります。
特定空家に該当する4つの条件
① 倒壊など保安上危険な状態
老朽化が進み、屋根や壁が崩落する危険がある建物はこの条件に該当します。特に、台風や地震で倒壊の危険が高まっているケースでは、行政が早期に立ち入り調査を行います。
例: 木造住宅の柱が腐食し、壁が傾いている。屋根瓦が落下しやすい状態。
② 衛生上有害なおそれがある状態
ゴミの放置や動物の繁殖、害虫の発生など、近隣住民に悪影響を与える状態です。悪臭や蚊・ハエの発生なども該当します。
例: 庭や室内にゴミが山積みになり、害虫が発生している。
③ 著しく景観を損なう状態
建物の外観が極端に破損していたり、雑草が伸び放題で周囲の景観を悪化させている場合が該当します。特に観光地や住宅地では問題視されやすい項目です。
例: 外壁がはがれ、落書きが放置されている。草木が道路にまで繁茂している。
④ その他、適切な管理が行われていない状態
建物の損傷が軽微でも、長期間放置されていることで防犯上の危険が高まるケースがあります。
例: 窓ガラスが割れたまま、ドアが開きっぱなしで放置されている。
特定空家に指定されるとどうなるのか
行政からの勧告と命令
特定空家に指定されると、市町村はまず所有者に対して指導や助言を行います。それでも改善されない場合、勧告→命令→行政代執行の流れになります。
固定資産税の優遇解除
「住宅用地特例」が適用されている土地でも、特定空家に指定され勧告を受けると、固定資産税の軽減措置が解除され、税額が最大で6倍になることがあります。
行政代執行のリスク
最終的に、所有者が改善を行わない場合は行政が建物を解体し、その費用を所有者に請求する「行政代執行」が行われる可能性があります。
特定空家指定を回避するための実践的ポイント
1. 定期的な清掃と点検
最低でも年に2〜3回は現地を訪れ、建物の外観や内部を確認しましょう。特に雨漏りやシロアリ被害は早期発見が重要です。
2. 雑草や樹木の管理
庭の雑草や樹木が伸び放題になっていると景観悪化や害虫の発生につながります。除草や剪定は定期的に行いましょう。
3. 郵便物の処理
ポストにチラシや郵便物が溜まっていると「空家である」と一目で分かります。知人や管理会社に定期的に確認を依頼すると良いでしょう。
4. 管理委託の検討
遠方に住んでいる場合や高齢の方は、不動産管理会社や行政書士に管理委託することで、特定空家指定を防ぎやすくなります。
行政による指導・勧告・命令の流れ
- 現地調査:市町村職員が現地を確認し、状況を記録します。
- 助言・指導:所有者に改善を求める通知が届きます。
- 勧告:改善がなければ正式に勧告書が発行され、固定資産税優遇が解除されます。
- 命令・代執行:最終的に行政が解体などの代執行を行い、その費用は所有者に請求されます。
特定空家に関する補助金・支援制度
自治体によっては、空家の解体費用や改修費用の一部を補助する制度があります。補助率は2分の1や上限50万円など地域により異なります。
例: 東京都では老朽危険家屋の除却費補助制度があり、最大100万円の支援が受けられる場合も。
また、空家バンクを活用して賃貸・売却を進めると、税制優遇を受けられるケースもあります。
空家所有者が今すぐできる対策
- 住宅の現状を写真で記録しておく
- 行政の空家担当窓口に早めに相談する
- 相続登記を済ませて所有者を明確にする
- 管理業者に委託する場合は契約内容を確認する
行政書士に相談するメリット
行政書士は、空家対策に関する法的手続きの専門家です。次のような場面で力を発揮します。
- 行政からの指導・勧告に対する対応書類の作成
- 空家解体や相続に関する補助金申請
- 空家管理契約書や委任契約書の作成
行政とのやり取りをスムーズに進めることで、不要なトラブルや費用を回避できます。
まとめ:特定空家を防ぐための第一歩
特定空家に指定されると、行政からの指導や税負担の増加など、所有者に大きな影響があります。しかし、日常的な管理と早めの対応で、ほとんどのケースは回避可能です。
空家を「放置する」から「活かす」へ。特定空家の定義を正しく理解し、今できる対策から始めましょう。

