行政書士三枝誠事務所
はじめに
外国人が日本で事業を立ち上げたり、会社経営に携わる際に必要となるのが「経営・管理」の在留資格です。 しかし近年、制度の悪用や実態のない会社設立が問題視され、出入国在留管理庁は要件を大幅に厳格化する改正案をまとめました。今後パブリックコメントを経て、10月に省令の改正を目指します。 本記事では、その背景や具体的な変更点、今後の対応策について詳しく解説します。
コンテンツ
経営・管理ビザとは?
在留資格の概要
「経営・管理」は、日本で会社を設立・経営する、または既存企業の管理業務に従事する外国人に必要な資格です。最大5年の在留資格が認められ、この資格での在留者は2024年におよそ4万1千人となり、5年前に比べ5割増えました。ただ、改正後の新しい要件をすべて満たすのはそのうちの4%ともいわれ、具体的な運用についても今後議論が必要である。
従来の要件
- 資本金などの総額がが500万円以上
- 2名以上の常勤職員を雇用
この基準は海外と比べても低く、参入障壁が小さい制度でした。
厳格化の背景と社会的要請
制度の悪用防止
実体のない会社を設立し、形式的にビザを取得するケースが多発していました。資本金や事務所の要件などが具体的に示され、形式だけの申請を防ぐため審査が詳細化されているビザ制度全体の信頼性を守る観点から管理が強化されている。
国際基準との比較
日本の500万円基準は、米国・韓国・シンガポールの数千万円基準と比べて低すぎると指摘されていました。
信頼性と透明性の確保
厳格化により、外国人経営者の実体性や信用を担保し、日本社会での受け入れ基盤を強化する狙いがあります。ビザ制度全体の信頼性を守る観点から管理が強化されている。
具体的な厳格化のポイント
資本金要件の引き上げ
500万円 → 3,000万円以上
現行の出入国在留管理庁の運用では、一般に資本金500万円程度を目安にするか、あるいは一定数以上の常勤職員を雇用することで事業規模要件を満たすケースが多く見られます。ただし、資金の出所や使途が明確であること、払込のエビデンス(銀行記録・払込証明等)が必要です。また、2025年以降に資本金の上限引き上げ(報道では3,000万円程度への引上げ検討)が報じられており、運用基準が変更される可能性があるため、申請時には出入国在留管理庁の最新公表情報を必ず確認する必要があります。加えて、資金の出所が合法的かつ透明であることを証明しなければなりません。銀行の振込記録や出資契約書などのエビデンスが必要で、申請者の資金管理能力も厳しく確認されます。場合によっては500万円以上の投資があっても、資金の使途が不明確であれば不許可となることもあります。
常勤職員の雇用義務
資本金に加えて、常勤職員1名以上の雇用が必須条件に。
日本人または永住者を雇用する必要がある場合がある。特に経営の実態を裏付けるために、雇用契約書や給与明細、社会保険加入状況を示す資料が重要となります。単なる名義雇用ではなく、実際に従業員が業務に従事していることが求められます。
経営者の経歴・学歴要件
経営や管理の経験が3年以上あるか、修士相当以上の学位があること
更新申請での新ルール
2025年7月17日以降、更新時には 「直近の在留期間における事業内容・経営活動の説明書」が必須提出書類に。事業の継続性や安定性を示すため、決算書の提出と経営活動の具体的な説明が求められる。
改正のスケジュールと影響
新規申請者
今後の申請者は新基準が適用され、より高い資金力が必要になります。
既存の保持者
遡及適用はされない見込みですが、更新時には新ルールが適用されるため注意が必要です。段階的措置があるのか注目です
外国人起業家への影響
要件の厳格化は不正な在留を防ぐことにはなるが、その一方で取得のハードルが上がれば日本での起業が敬遠されるおそれもあります。小規模な事業による参入が難しくなり、スタートアップへの制約が懸念されます。また、すでにビザを持っている外国人に対しても審査が厳しくなる可能性もあり、永住許可や帰化申請のハードルも高くなると予想されています。
日本社会への影響
信頼性のある企業進出が期待される一方で、地域密着型の小規模事業の参入機会は減少する可能性があります。
行政手続きの負担増
更新時の事業説明書の作成は専門的知識を要し、行政書士の支援が不可欠です。
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今後の展望
今回の厳格化は「形式的な申請者の排除」と「実体を持つ経営者の支援」を目的としています。 資金がある一部の在留目的の外国人の申請は減る一方、まじめに意欲のある経営者にもかなり影響があると考えられます。外国人材の受け入れ政策全体の一環として仕方のないことですが、将来ある有望な若者が日本を選択しづらくなるのは避けたいものです。
まとめ
- 資本金要件は500万円から3,000万円に引き上げ
- 常勤職員1名以上の雇用が必須化
- 経営者の経歴や学歴が要件に
- 更新申請では事業説明書の提出が義務化
- 新規申請者は大きな影響、既存保持者も更新に注意
経営管理ビザは年々厳格化しており、従来よりも準備すべき書類や要件が増えています。特に事業計画の実現性やオフィス要件、常勤職員の配置などが重要視されます。確実に取得するためには、専門知識を持つ行政書士に相談し、計画段階から入念に準備を進めることが成功のカギです。

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