こんにちは。行政書士の三枝誠です。
本記事では、2026年5月までに施行予定の**「法定養育費制度」**について、法務省が公表している情報および2025年8月時点で明らかになっている最新動向を整理し、行政書士としての視点から詳しく解説します。
1. 法定養育費制度が導入される背景
1-1. 養育費不払いの現状
日本では、離婚後に養育費を受け取れていない家庭が非常に多く存在します。統計上、養育費を実際に受け取っているひとり親世帯は約2割程度に過ぎず、養育費不払いは社会問題となっています。
1-2. 子どもの利益確保のための民法改正
こうした状況を改善するため、2024年に民法が改正され、共同親権制度の導入や養育費に関する規律の強化が盛り込まれました。その一環として、2026年5月までに施行される予定なのが「法定養育費制度」です。
この制度の狙いは、子どもの利益を最優先にし、親の協議がなくても最低限の養育費が確保できる仕組みを整えることにあります。
2. 法定養育費制度の概要
2-1. 制度の基本仕組み
離婚時に養育費の取り決めがなされていない場合、法律に基づいて一定額の養育費を自動的に請求できる仕組みが導入されます。
これにより、協議や調停が行われなくても、子どもを監護している親は直ちに養育費を受け取れる道が開かれることになります。
2-2. 請求できる対象者
- 子どもを主に監護・養育している親
- 離婚後、相手方との間で養育費の取り決めをしていない場合
2-3. 請求できる期間
- 父母が養育費について協議または家庭裁判所で取り決めをするまで
- あるいは子どもが18歳に達するまで
いずれか早い方の日までが請求対象期間となります。
3. 最新の省令案と金額の目安(2025年8月時点)
3-1. 子ども1人あたり「月額2万円」を目安
法務省がまとめた省令案によれば、子ども1人につき月額2万円が法定養育費の標準額として検討されています。
この金額は「最低限度の生活を維持するための標準的な費用」と位置づけられており、実際の生活費をすべてカバーするわけではありません。あくまで「最後のセーフティネット」としての性格を持っています。
3-2. 先取特権付きの上限額は「月8万円」
さらに、法定養育費には**先取特権(他の債権より優先して支払わせる権利)**が認められる予定です。
ただし、強制執行を可能にするこの制度の対象額には上限があり、月額8万円までとされています。
3-3. 今後の動き
現在は**パブリックコメント(国民からの意見募集)**が行われている段階であり、最終的な金額や制度の詳細は今後さらに調整される可能性があります。
4. 行政書士ができる支援
4-1. 離婚協議書・公正証書の作成支援
法定養育費はあくまで最低限の保障です。実際の生活に見合った金額を確保するためには、両親の収入や子どもの生活実態に即した協議が不可欠です。
行政書士は、その協議内容を離婚協議書や公正証書として文書化するサポートを行います。
4-2. 制度の正しい理解の普及
「法定養育費=月2万円」と誤解される恐れもあります。行政書士は、制度の目的や限界を丁寧に説明する役割を担います。
4-3. 強制執行を見据えた対応
法定養育費には先取特権が認められます。行政書士は、強制執行を見据えた契約書・合意書の作成支援を通じて依頼者を守ることができます。
5. 制度のメリットと課題
メリット
- 協議がなくても子どもに最低限の養育費が確保される
- 強制執行が容易になり、不払いへの対策が強化される
- 離婚後すぐに請求でき、遡って請求できる場合もある
課題
- 月2万円は実際の子育て費用に比べると不足している
- 親の支払い能力が極端に低い場合、履行が困難になる可能性がある
- 制度が適用されるのは改正民法施行後に離婚した場合のみ
6. まとめ|制度の活用と注意点
2026年5月までに施行される法定養育費制度は、養育費不払い問題に対する大きな前進です。
現時点で示されている省令案では、子ども1人あたり月額2万円・先取特権付きで上限月8万円という基準が想定されています。
ただし、これはあくまで最低限の保障に過ぎません。
実際には、親の収入や子どもの教育費などを踏まえ、個別の協議や調停で適切な金額を決めることが最も重要です。
行政書士としては、
- 協議書や公正証書の作成
- 制度内容の正確な説明
- 強制執行を見据えた契約支援
を通じて、依頼者の権利と子どもの利益を守るお手伝いをいたします。
また、2024年の民法改正では父母の離婚後の子に関する様々なルールが改正されました。今回の法定養育費以外についても引き続き解説していきたいと思います。

