こんにちは。行政書士の三枝誠です。
近年、日本の入管行政は外国人経営者に対する審査を年々厳格化しています。その象徴的な動きが「経営管理」の在留資格(いわゆる経営管理ビザ)における 常勤職員の配置義務化 です。これまで資本金や事業計画を中心に審査されていたものが、今後は「常勤職員を一人以上置いているか」という要件が極めて重要になってきます。
はじめに
2025年、出入国在留管理庁は「経営管理ビザ」の運用を厳格化する省令改正を行いました。これまでの制度では、形式的な雇用契約を整えるだけで常勤職員として認められるケースも少なくありませんでしたが、改正後はそのような曖昧さが排除され、より厳密な実態の伴う雇用が求められるようになっています。特に、社会保険や雇用保険への加入状況、実際の勤務時間や業務内容の裏付けが重視されるようになり、常勤職員の存在が単なる条件ではなく、企業の安定性や信頼性を示す重要な指標として扱われることとなりました。さらに、今回の改正は新規取得だけでなく更新審査にも反映されるため、外国人経営者は中長期的な雇用体制の整備を迫られることになります。本記事では、最新の改正内容を踏まえて常勤職員の定義、採用時の注意点、配置義務がもたらす影響などを詳しく解説し、外国人経営者がスムーズかつ確実に経営管理ビザを取得・維持できるよう必要な情報を整理してお伝えします。
コンテンツ
常勤職員とはだれを指すのか
省令改正後の基準では、「常勤職員」とは単にフルタイム勤務者を指すだけでなく、社会保険や雇用保険に適切に加入し、事業の実態を伴って勤務している職員を意味します。認められるのは以下の在留資格や身分を持つ人です。
- 日本人
- 永住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 定住者
これらの身分を持つ人は、日本で安定して就労できるため、常勤職員としてカウント可能です。逆に言えば、これらの身分を持たない人を常勤職員とする場合、形式的に契約書を用意するだけでは不十分で、実態として安定した労働力となり得ないと判断されます。審査担当者が重視するのは「雇用の継続性」「事業の持続性」であり、形式的な在籍では企業の安定性を証明できないのです。
常勤職員になれない人は?
2025年改正では、「形式的な常勤職員」を排除するための基準が強化されました。以下のような人は認められません。
- 留学生(資格外活動でのアルバイト含む)
- 短期滞在者
- 就労資格のない在留資格保持者(家族滞在など)
- 就労ビザ保持者でも勤務形態や在留資格活動範囲と合致しない場合
特に「雇用契約書だけ作成して実際に勤務していないケース」や「保険加入をしていない雇用形態」は不許可対象となります。さらに、親族を常勤職員とする場合には特に厳しく審査され、給与支払いや勤務実態に客観的証拠が伴わない場合は虚偽雇用とみなされることもあります。結果として、単なる人員確保ではなく、事業実態に即した正規雇用の整備が不可欠となっています。
常勤職員の採用にあたっての注意点
改正後の審査では、以下の点がより厳格に確認されます。
- 社会保険・雇用保険への加入:加入証明を提出することが求められるケースが増加
- 実際の勤務実態:給与明細、勤怠記録などを通じて勤務の実態を証明
- 名義貸し禁止:親族や知人を形式的に「常勤職員」とすることは認められない
- フルタイム勤務の明確化:週の勤務時間や契約内容を客観的に示す必要
審査基準は「実体のある事業運営をしているかどうか」に重点が置かれるようになっています。したがって、採用時には履歴書や職務経歴書の確認だけでなく、労働条件通知書や就業規則の整備を行い、従業員が安心して長期的に働ける体制を整えることが不可欠です。また、給与の支払いも銀行振込など透明性の高い方法で行い、後の審査に備えて記録を残すことが望ましいでしょう。
常勤職員配置義務が与える影響(2025年改正ポイント)
省令改正により、常勤職員の配置義務はより厳格化しました。その影響は以下の通りです。
- 不許可リスクの増加:形式的な雇用ではビザ申請が認められない
- 事業計画の現実性が重要:常勤職員の給与支払いを継続できるかが審査対象
- 更新時のチェック強化:ビザ更新の際も常勤職員の勤務実態が確認される
- 経営の安定性が必須:常勤職員を維持できる財務基盤があるかどうかが評価される
結果として、外国人経営者には「より現実的で持続可能な事業運営」が求められるようになっています。具体的には、短期間で利益を出すことだけでなく、安定した雇用を継続し、従業員の福利厚生を確保できるか、さらには社会保険や税務上の義務を誠実に履行できるかどうかが重要視されるようになりました。単にビジネスを立ち上げるだけでなく、地域社会との信頼関係を築き、持続的に日本経済に貢献できる企業かどうかが評価される時代に入ったと言えるでしょう。さらに、この改正は企業の内部統制にも影響を与え、適正な労務管理や透明性の高い経営が求められるため、経営者自身のコンプライアンス意識が問われる局面も増えてきます。
行政書士がサポートできること
省令改正後は、書類不備や要件の誤解による不許可事例が増えることが予想されます。行政書士は次のような支援を行います。
- 常勤職員に関する要件の確認と採用前アドバイス
- 雇用契約書や就業規則の作成・整備
- 社会保険加入の適正チェック
- 事業計画書の作成支援(給与計画の妥当性を含む)
- 出入国在留管理庁への申請手続き代理
専門家のサポートを受けることで、改正後の厳格な審査に対応し、不許可リスクを最小限に抑えることが可能です。さらに、行政書士は単に申請書類を作成するだけでなく、経営者のビジネスモデルや雇用戦略についてもアドバイスを行い、中長期的に安定した経営をサポートします。特に外国人経営者にとっては、日本の法制度や労働環境に精通した専門家の存在が、成功への大きな後押しとなるでしょう。
まとめ
経営管理ビザにおける 常勤職員 とは、単に名前を置いておくだけの存在ではなく、実際に日本に居住し、フルタイムで働き、社会保険に加入している従業員を指します。
2026年以降は、常勤職員の配置が義務化されることで、外国人経営者にはより実体的な経営が求められるようになります。これはビザ取得のハードルが上がる一方で、日本社会にとっては雇用創出や税収の安定化につながる重要な制度改革です。
外国人経営者の皆さまにとっては、常勤職員の採用戦略を早めに立てておくことが、経営管理ビザの取得・更新の成否を分けるポイントになるでしょう。
👉 行政書士三枝誠の事務所では、経営管理ビザの申請や更新、常勤職員に関するご相談を随時承っています。お気軽にご相談ください。

